士業のWeb集客のポイント

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独占業務に守られた士業は、かつては顧問先獲得にそれほどの苦労はありませんでした。ところが日本弁護士連合会の『弁護士白書2020年版』によると、2020年現在の弁護士数は2011年比38%増の4万2164名、同公認会計士数は49%増の3万1793名になるなど、市場的に「士業供給過多」の状況になっており、事務所間の顧問先獲得競争が激化しています。そこで重要性が増しているのが「士業のWeb集客」と言われています。ここではそのポイントを解説します。

士業のWeb集客のメリット

士業がWeb集客をする重要性は、ユーザ(潜在顧問先)に自事務所の存在価値と特徴、法務サービス力の高さなどを知ってもらうためです。近年はどの業種・業界もWeb集客に取り組んでおり、問題を抱えた潜在顧問先もその解決を委任する士業を探す際は、ネット検索で探す時代になっています。したがって士業側にこの受け入れ態勢がなければ、新規顧問先開拓のチャンスを逸することになります。
そこで士業のWeb集客のメリットとして、一般に次が挙げられます。

  • 広告費不要
    ……Web集客はGoogleキーワード検索によりユーザから接触してくる仕組みなので、広告費が不要
  • 継続的な集客が可能
    ……一次的な集客しかできない広告と異なり、Web集客の場合は常設のWebサイトにより継続的な集客が可能
  • 広告よりアピール力が強い
    ……字数制限のある広告と異なり、Web集客の場合は事務所の特徴、法務サービス力の高さ、実績などを詳しくPRできるので、客観性と説得力のあるアピールができる

集客力が高い士業Webサイトの特徴

顧問先が増加している士業のWebサイトには、次の共通した特徴があると言われています。

(1)ターゲットが明確
集客力が高い事務所のWebサイトは、顧問先にしたいターゲットを明確化し、そのターゲットに向けたコンテンツを集中砲火的に発信しています。

(2)得意分野の専門性をアピールしている
集客力が高い事務所のWebサイトは受任業務を自分の得意分野に絞り、その専門性と実績をアピールしています。

集客力が高い士業Webサイトの作り方

集客力が高い士業のWebサイトは、基本的に次の手順で制作します。

手順1:アピール要素の洗い出しと専門業務の明確化
Webサイト開設の目的は、自事務所の存在価値と特徴、法務サービス力の高さなどのアピールにより、ユーザを集客することにあります。
このため過去の受任件数とその内容、受任成功・失敗事例、顧問先の評価などを洗い出し、その分析から自事務所の専門業務を明確化します。

手順2:ターゲットと集客目標の設定
明確化した専門業務に絞ったターゲット(潜在顧問先)を設定します。続いてアクセス数、コンバージョン数(問合せ・資料請求数)などによる集客目標を設定します。

手順3:Webサイトの設計とコンテンツ作成
設定したターゲットがコンテンツを閲覧しやすいWebサイトの設計と、ターゲットの情報ニーズと自事務所の専門性が合致したコンテンツを作成します。
またコンテンツは定期的な更新が重要です。それによりWebサイトにアクセスしてきたターゲットから「常に専門分野の最新情報を提供している」、「この事務所のコンテンツは信頼できる」などの評価を受けやすくなります。さらにコンテンツの定期的な更新はGoogle検索エンジンの評価要件の1つでもあるので、検索結果の1ページ目に表示される要因にもなります。

手順4:集客効果の測定
Webサイトを開設したら、アクセス数、コンバージョン数を1カ月ごとに集計し、集客効果を測定します。集客目標未達の場合はその原因を分析します。

手順5:Webサイトとコンテンツの改善
分析により特定できた問題点を改善します。改善を繰り返すことで検索エンジンとターゲットの評価が高まり、集客力が向上します。

士業WebサイトのSEO対策のポイント

Web集客に成功するには、「SEO対策」が不可欠です。
SEO対策(Search Engine OptimizationːGoogle検索エンジン最適化)とは、ユーザが士業を探すためのGoogle自然検索において、Google検索結果の1ページ目に自事務所のWebサイトを表示させる対策のことです。これにより、

  • 自事務所の認知獲得
  • 自事務所Webサイトのコンテンツに高い関心のあるターゲット集客
  • 自事務所のブランド確立

などの効果が得られます。
SEO対策の目的は、

  • クローラ(Google検索エンジンロボット)にWebサイトのコンテンツを検索エンジンのデータベースに登録してもらう
  • ユーザが求めている有益なコンテンツを作成・提供する

の2つと言われています。
この2つを実行するのがSEO対策であり、次の4つの対策で行います。

(1)内部対策
内部対策は、クローラがWebサイト内を回遊しやすいようにURLコードを整理することです。そのためには、

  • サイトの階層構造がシンプルである
  • 内部リンクが整理されている

必要があります。

(2)キーワード対策
キーワード対策は、ユーザが求めている情報を容易に検索できるよう、コンテンツのキーワードを適切に設定することです。そのためにはキーワード調査ツールで、ユーザは「どんな情報をどんなキーワードで」検索しているかを調査する必要があります。
なお「SEO対策=キーワード対策」と思われがちですが、キーワード対策はSEO対策の1つに過ぎません。

(3)被リンク対策
被リンク対策は、他のサイトからリンクを貼られることです。Googleは被リンクをWebサイト評価要件の1つにしています。被リンク対策をするには、情報価値が高い良質なコンテンツの作成・公開が重要になります。

(4)コンテンツ対策
コンテンツはSEO対策の要と言われています。このためコンテンツは、

  • オリジナルコンテンツである
  • ユーザが求める情報である
  • 競合サイトのコンテンツとの違いが明白である

などの必要があります。
さらに特定分野に特化しているExpertise(専門性)有益性があり他の模範となるAuthoritativeness(権威性)、ユーザにとって信頼できるTrustworthiness(信頼性)の3要件を満たしたコンテンツは、Google検索エンジンの評価が高く、Google検索結果の1ページ目に表示される確率が高まります。

Googleキーワード検索の集客限界を突破する方法

SEO対策によりどんなに良質なコンテンツを揃えたWebサイトを開設しても、Google自然検索で獲得できる集客数にはやはり限りがあります。この限界を突破するのが次の方法です。

(1)リスティング広告出稿
リスティング広告は、Google自然検索のキーワードと連動して、検索結果画面上部の広告枠に表示される有料文字広告です。リスティング広告出稿により検索結果画面に確実に広告が掲載されるので、自事務所のWeb集客数増が期待できます。

(2)士業情報ポータルサイトへの登録
士業情報ポータルサイトは士業に特化した情報を集約したサイトです。このサイトのコンテンツを閲覧するのは、企業法務関係者や法務関係の問題を抱えその解決に役立つ情報を求めているユーザが大半です。したがってこのサイトに広告出稿すれば、自事務所に対する企業法務関係者の認知度向上、問題を抱えているユーザの自事務所Webサイトのアクセスが期待できます。

(3)SNSへの投稿
SNSは様々な業種・業態の集客流入経路になっています。そして士業に向いているSNSはFacebookと言われています。
Facebookにはビジネス向けの「Facebookページ」があり、同ページに投稿すればFacebookユーザと交流できる仕組みになっています。このためマーケティングに欠かせないツールともなっており、多くの企業が自社情報を投稿しています。リスティング広告と異なり継続性がある媒体なので、自事務所の知名度向上、将来の顧問先となるユーザ育成、ブランディングなどに効果的な媒体と言えるでしょう。

まとめ

Web集客は「Webマーケティングの集積回路」と言われるほど、Webマーケティングのエッセンスが凝縮されています。このためWeb集客に成功するには、Webマーケティングに関する専門知識が必要です。士業の世界の競争は今後さらなる激化が予測されています。この荒海を乗り切る船は、事務所の専門性や存在価値の低下を招くアウトバウンドセールではなく、事務所の専門性や存在価値を拠り所にしたWebマーケティングと言われています。これからはWebマーケティングに強い事務所が荒波を乗り切れる船になると思われます。