KPI・KGI・KSF、ビジネスパーソンが知っておきたい基礎知識

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事業計画、プロジェクト計画、販売促進計画など全社レベル、部門レベルの別を問わず、あらゆる計画策定において重要なのがKPI・KGI・KSFの設定です。ここではビジネスパーソンが素養として知っておきたいKPI・KGI・KSFの基礎知識を解説します。

KPI・KGI・KSFとは

まず「KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)」とは、KGIの達成に必要となるプロセスごとの目標を数値化した指標のこと。

KGIを達成するために、どのプロセスとどのプロセスでどのような目標数値を達成すれば良いのかの、道筋を示す指標と言えます。

次に「KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標)」とは、全社・部門レベルの最終目標を数値化した指標のこと。

例えば「○○年○○月竣工予定の分譲マンション予約販売目標800戸」、「生産目標前年度比120%増」などの目標です。

KGIの設定により全社・部門レベルの目標が明確になり、目標達成のプロセスも明確になります。

最後に「KSF(Key Success Factor/重要成功要因)」とは、KGIとKPIで掲げた数値目標達成において、必須となる要因のこと。「CSF(Critical Success Factor)」とも呼ばれます。

KSFは市場動向、競合状況などの「外部要因」と、自社の強み、弱みなどの「内部要因」に分かれます。

KPI設定のメリットと手順

KPIは言わばKGI達成に向けた現場の数値目標です。KPIの目標達成度を定期的に評価することで、KGIの目標達成進捗度が見えてきます。

KPI設定のメリット

KPIの設定には次のメリットがあると言われています。

(1)優先度が高い業務の明確化

KPIの設定により、優先的に取り組むべき業務が明確になります。例えば販促サイトの資料請求数目標を300件に設定した場合、サイトへのアクセス数を増やすため

  • SEO対策を強化したコンテンツ制作
  • コンバージョンされやすいリスティング広告制作
  • SNSフォロワーの増加対策と、共感されやすい投稿制作

などが優先的に取り組むべき業務として浮かび上がってきます。

(2)リソースの明確化

KPI設定により、目標達成に必要な人員、予算などのリソースが明確になります。それにより無駄なリソースの排除、効率的な業務運営などが可能になります。

(3)パフォーマンスの発揮

KPIの設定により、チームメンバーは自分の役割が明らかになり、目標達成に向けて自律的に行動できるので自分のパフォーマンスを発揮しやすくなります。またKPIの目標達成というチームの明確な課題を共有しているので、業務の連携・補完の関係も生まれ、労働生産性・業務効率向上、組織力の強まりなどの効果も期待できます。

KPI設定の法則「SMART」

KPIの設定においては「SMART」と呼ばれる法則があります。この法則に沿うことで現実的なKPIを設定できるとされています。SMARTは次の5つの法則から成っています。

  • 「Specific(明確性)」……数値目標を明確化し、チームメンバー全員の目標達成に対する認識共有を図る
  • 「Measurable(計測性)」……目標の達成度を数値で計測する
  • 「Achievable(達成可能性)」……チャレンジすれば何とか達成できる難易度の目標を設定する。難易度の高い目標設定はチームメンバー全員のモチベーションを下げ、達成が不可能になる
  • 「Relevant(関連性)」……KPIとKGI・KSFの関係性を明確化する。これによりチームメンバーは取り組むべきKGIの全体像、自分の役割などが見え、モチベーションが上がる
  • 「Time-bound(期限)」……KPIに期限を設ける。これにより緊張感とスピード感のある業務遂行が期待できる

KPIの設定手順

KPIの設定は、基本的に次の手順で行います。

手順1:KGIの設定……事業計画、販売促進計画、働き方改革推進計画など、計画目的に則したKGIを設定する

手順2:KGI達成のためのプロセス洗出し……KGIで設定した数値目標を達成するためのプロセスを検討し、最適なプロセスを決定する

手順3:KSFでの検証……決定したプロセスをKSFで検証し、KGI達成に必要な要因を洗い出す

手順4:KPIへの落とし込み……KSFで洗い出した要因に基づき、プロセスの業務ごとに達成すべき数値目標を設定する

このようにKPIはKGI・KSFと密接な関係があるので、KPIの設定はKPI・KGI・KSFの「3Kセット」で行う必要があります。

KSFの分析手法

KPI達成に必要な要因を洗い出すKSFは、一般に次の5つの分析手法を用います。

1.「SWOT分析」

SWOT分析は、自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つを分析する手法です。KSFでは強みと弱みは内部要因、機会と脅威は外部要因になります。

内部要因になる自社の強みと弱みは、商品競争力、営業力、アフターフォロー体制、広告宣伝力、人材などを競合と比較した場合の強み・弱みです。

外部要因になる機会と脅威は、技術革新による市場のニーズ変化、景気変動、海外のカントリーリスクなど自社事業のビジネスチャンスやリスクとなる経営環境の変化や、市場規模、自社のシェア、競合の参入・撤退状況などの業界動向です。

2.「バリューチェーン分析」

バリューチェーンは、企業の事業活動を製造・販売等の「主活動」と人事・労務・研究開発等の「支援活動」に分け、どのプロセスでどれだけの「付加価値」を生み出しているかを把握するフレームワークです。KSFでは内部要因の分析に応用されます。

3.「3C分析」

3C分析は、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3要素に基づきKSFを抽出するフレームワークです。KSFではCustomerとCompetitorは外部要因、Companyは内部要因になります。

3C分析では、まずCustomer分析によりターゲットユーザ、ユーザニーズ、市場動向などの現状と将来予測を把握します。

次に、Competitor分析により競合他社の現状・市場シェア、強み・弱み、市場の評価、ユーザニーズへの動向などを把握します。

最後に、Company(自社)分析により自社の強み・弱み、市場の評価を把握し、競合との比較を行います。

これらの分析により、ユーザニーズを満たして競合と差別化できるKSF抽出が可能になります。

4.「5F分析」

5F(ファイブフォース)分析は、新規参入の脅威、代替品の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力、競合他社との敵対関係の5要素に基づきKSFを抽出するフレームワークです。

KSFでは新規参入・代替品の脅威は外部要因、それ以外は内部要因になります。

  • 新規参入の脅威……業法改正、規制強化・緩和、技術革新、市場成長性など、新規参入のリスク
  • 代替品の脅威……代替品の開発とその価格競争力、商品価値などの脅威
  • 売り手の交渉力……商品販売先の企業数、販売先との力関係などサプライヤーのリスク
  • 買い手の交渉力……自社に商品供給をしてくれる企業数、それらの企業との力関係による収益低下などバイヤーのリスク
  • 競合他社との敵対関係……競合や業界の現状など競争激化要因

これらの分析により、業界における自社のポジション明確化、自社ビジネスチャンス・脅威の明確化などができ、競争優位のポジションを獲得するためのKSF抽出が可能になります。

5.「PEST分析」

PEST分析は、Politics(政治的要因)、Economy(経済的要因)、Society(社会的要因)、Technology(技術的要因)の4要素に基づきKSFを抽出するフレームワークです。

KSFではすべて外部要因になります。

  • Politics(政治的要因)……業法・条例改正、税制改正、規制強化・緩和などの政治的要因が、自社事業にどのような影響を及ぼすかの分析
  • Economy(経済的要因)……経済成長率、株価・金利動向などが自社事業にどのような影響を及ぼすかの分析
  • Society(社会的要因)……人口構造、購買行動、国際情勢などの変化が自社事業にどのような影響を及ぼすかの分析
  • Technology(技術的要因)……技術革新が自社事業にどのような影響を及ぼすかの分析

これらの分析により自社への外部影響要因が明らかになり、KSF抽出が可能になります。

実際のKSF抽出においては、KGIの目的に適した特定の分析手法、あるいは複数の分析手法の組合せを用います。

まとめ

KPI・KGI・KSFは企業の様々な計画策定において重要です。ただKPIの設定を誤るとチームメンバーのモチベーションやパフォーマンス低下、業務効率悪化、労働生産性低下など負の連鎖を招くリスクがあります。また設定を誤ったまま、例えKPIを達成しても肝心のKGIが未達に終わる可能性があります。

したがってKPIの設定とKFS抽出においては、専門家のアドバイスを受けると共に適切なKPI管理ツールやKSF抽出の分析ツールを用いる必要があるでしょう。