マーケティング部門が直面する課題解決策と、マーケターがはまりやすい罠の回避策は?

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マーケティング業務は広範で、連携する他部門や協力会社も多岐にわたります。必然的にマーケティング部門が直面する課題は多く、マーケティング部門を支えているマーケターに仕掛けられる罠も枚挙に暇がありません。この課題解決策と罠は何でしょうか。

マーケティング部門が直面している深刻な課題

共通ポイントサービス「Ponta」を運営しているロイヤリティマーケティングが今年3月に発表した「マーケターへの課題調査、現場が抱える一番の悩みとは?」によると、マーケターが抱えている課題は「商品・サービスの企画・開発力不足」、「市場や競合に関するデータ不足」、「蓄積データの活用方法」がトップ3を占めました。

また業務別では「社内外のコミュニケーション」と「データ分析・活用」に関するマーケターの悩みが上位になりました。

こうした調査結果はもとより、マーケティングの現場では毎日のように様々な問題や悩みが発生しています。

例えばある企業のマーケティング部門では、経験豊富なマーケターの採用に苦慮し、ある企業のマーケティング部門では必要な予算措置をしてもらえず効果的なマーケティング展開ができず、といった具合です。

現場の悩みの種は尽きませんが、マーケティング部門に共通する一般的な課題として次が挙げられます。

(1)マーケティングのROI把握

マーケティングのROI(投資利益率)は、マーケターの間では「把握が不可能に近い」と言われています。これを経営ボードから要求されたマーケティング部門は、往々にして思案投げ首状況になるとも言われています。

しかし、マーケティングの成果を客観的に確認するためにこの把握は欠かせず、経営ボードが要求するのも当然と言えます。またこれを把握できなければ、新しいマーケティング展開をする際に必要な予算の根拠を経営ボードに説明することもできません。

マーケターの間で「不可能に近い」と思われているROI把握も実は方法があります。それはマーケティング部門と営業部門の成果のリンクです。

具体的にはマーケティング部門向けのソフトウェアツール「MA(マーケティングオートメーション)」等と営業部門向けのソフトウェアツール「CRM(顧客関係管理)」・「SFA(営業支援システム)」等をリンクさせることです。

これにより、マーケティング部門はどれだけの見込み客数を獲得し、マーケティング部門からの送客により営業部門がどれだけの顧客数を獲得したかの把握が可能です。

この数値にROI把握に必要なマーケティング指標を加味し、自社で設定した計算式で算出すれば、ROI把握が可能になると言われています。

(2)チームワーク

この課題はマーケティング部門のみならず、各部門が抱えている全社共通的な課題かも知れません。しかしマーケティング部門においては、部員の業務スキルや業務フローがバラバラだとベクトルが合わず、マーケティング成果が属人化してしまいます。

例えばA部員がマーケティングを担当している製品Aは毎月コンスタントに売上2000万円以上に貢献しているのに、B部員がマーケティングを担当している姉妹製品Bの売上は毎月500万円以下と言った具合です。その結果チームワークができず、マーケティングの定量的目的であるROI向上も不可能になるでしょう。

また「各人が目先の目標達成や業務処理に汲々とし、部門の中長期計画が立てられない」、「体系的な戦略的マーケティング活動が展開できず、戦術(マーケティング施策)レベルのマーケティング活動に終始している」、「部員ごとにKPI(重要業績評価指標)が異なる」などの状況になる可能性もあるでしょう。

これを解決するには、マーケティング部門の業務フローの問題点を洗い出し、長期的な視点に基づくフレームワークを構築し、全部員共通のKPIを設定し、それを部員全員で追求する必要があるでしょう。

(3)デジタルマーケティングの優先順位付け

近年は「デジタルマーケティング」の重要度が加速しています。特にtoBビジネスを展開している企業の場合、従来の営業手法のアウトバウンドセールスが効果を発揮できなくなり、インバウンドセールスへの転換が急務と言われています。

この転換において欠かせないのがデジタルマーケティングです。ところが、こうした企業のマーケティング部門が直面しているのが「どの事業・商品からデジタルマーケティングに取り組めば良いのか、その優先順位が分からない」ことだと言われています。

初めてデジタルマーケティングに取り組む場合、全事業で一斉スタートと言う訳にはゆきません。これは各事業部のラインナップ商品も同じです。したがってどの事業部から、どの商品からデジタルマーケティングを実施してゆくのかの優先順位を付けなければならないのですが、マーケティング部と各事業部との意見が合わない、マーケティングの認識が違うなどで暗礁に乗り上げるケースが多いと言われています。

この課題を解決するには、デジタルマーケティングの対象を事業部との意見擦り合わせ等で決めるのではなく、客観的な数値データに基づき決めることだと言われています。

例えば「自社事業や製品に関する月間検索回数」、「事業部ごとの月間アクセス数とランディングページ・直帰率・離脱率」、「事業部が獲得している見込み客数」などのデータです。

これらのデータ分析結果に基づきデジタルマーケティングとの親和性をチェックすれば、適正な事業・商品の優先順位を決定できるでしょう。

マーケターがはまりやすい罠

特に経験の浅いマーケターが過信や混同しやすいが故にはまりやすい罠として、一般に次が挙げられます。

(1)マーケティング手法に対する思い込み

マーケティングには様々な手法があり、理想的なマーケティングはマーケティング手法と市場ニーズの合致と言われています。ところが市場ニーズは常に変化し、流動しています。

したがって、マーケティング手法と市場ニーズの合致は、一時的にはあり得ても長期的に続くものではありません。したがって市場ニーズが変わればマーケティング手法も変えなければなりません。

ところが「手法とニーズの一時的な合致=成功した手法」と思い込み、成功した手法を変えないマーケターがたまにいます。合致は一時的なもので継続的なものではなく、ニーズが変われば手法を一から見直す必要があります。

マーケターは常に市場ニーズの変化を見極め、新しいニーズに適した手法を探り続ける必要があります。

(2)「絞り込む」と「狭める」の混同

マーケティングで行うターゲティングは、自社商品の対象となる非認知客・見込み客・顧客をユーザの属性、嗜好、ペルソナ設定などに基づき「絞り込む」ことです。

ところが「ターゲットを絞り込む」と「(ピンポイントしやすいように)ターゲットの幅を狭める」を混同しているマーケターがたまにいます。「絞り込む」と「狭める」は似て非なるものです。

と言うのは「絞り込む」の対象は非認知客・見込み客・顧客であり、非認知客を見込み客へ、見込み客を顧客へと引き上げるためのアプローチと自社との関係性構築が目的になります。ところが「狭める」だと、その対象は見込み客・顧客あるいは顧客であり、そこへのアプローチと自社との関係性構築が目的になってしまいます。

ターゲットの絞り込みは母集団が大きいので、マーケティング活動の手間はかかりますが見込み客・顧客の獲得数や売上可能性の確率は上がります。一方、ターゲットを狭めるとピンポイントアプローチでマーケティング活動の手間を省けるように思えますが、母集団が小さくなるので見込み客・顧客あるいは顧客の獲得数や売上可能性の確率が下がります。

マーケティングの本質は「営業部門が行う営業成果の確率を高めること」とも言われます。「ターゲットを狭めること」はこの確率を下げることに他ならないと言えるでしょう。

まとめ

マーケティングの現場に「セオリー」はありますが「成功の方程式」や「確実性」はありません。マーケティング活動は常に試行錯誤であり、「セオリーの検証と修正の繰返しだ」と言われます。その意味でマーケターには高度なマーケティング理論の習得より、経験の場数とすぐには上がらない成果を追求し続ける根気強さが求められると言えるでしょう。